トトがしゃべった日 (水曜日)

トトがしゃべるのにもだいぶ慣れた。
そういえば、色々聞きたいこともあるのだ。
朝、トトにエサをやり出社しようとしたら、
「こら! 『いってきます』は?!」
と言われた。お前は母親か。

帰宅して、エサをやりながら長年の疑問を聞いてみた。

「なあトト」
「何? 今ご飯食べてるんだから、後にして!」

私はトトが飯を食い終わるまで辛抱強く待った。

「もういいか?」
「いいよ。で、なに?」

「ときどき、部屋の隅をじーっと見てるだろ。あれは何を見てんの?」
「あー、あれ? アンタには見えないの?」

「…いったい何が見えてるんだ?」
「怒った人とか、泣いた人とかが部屋に出たり入ったりしてるの。せわしいよねー」

…それってまさか。
気になる。部屋の隅が気になる。

「…今も居るのか?」
「ああ、今はアンタの後ろに二人いるね。」

ぎゃあ。

私の悲鳴に驚いて、トトは私の後ろにすっ飛んでいった。

「お、おいそっちには…居るんじゃないのか?」
「アンタの声の方がよっぽど怖いよ。」

そうですか。くそう。もう寝る。
今日は知らなくて良いことを知ってしまった。
聞かなければ良かった。

<つづく>


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