トトがしゃべった日 (木曜日)

今日は、少々朝寝坊してしまった。

トトも珍しくぐっすり寝ている。
私は大急ぎで仕度をし、会社に出かけたのだった。

あ…。トトにエサをやるのを忘れた。
しまった。
仕事を終えると、私は急いで帰宅した。
トトが恨めしそうな顔で出迎えてくれた。

「ただいま!」
「…おかえり。で、なんか言うことは?」

「ははは。今日は150円もする缶詰買ってきたよ。ほらほら。」
「ふぅーん。」

早速缶詰をエサ入れに開けてやったが、トトはなかなか食べなかった。
相当頭にきているらしい。

「悪かった悪かった。ごめんよー」
「ふん。まあいいわ。ちょっとした仕返しもしといたし。」

トトはエサを食べ始めた。
最後の言葉が気になる。

ふと見ると、敷きっぱなしにしていた布団の上の枕、なんだか濡れているような。
まさか。
ちょっと黄色いような。
まさか。
なんだか、強烈な臭気。
私の枕は、トトのおしっこにより攻撃を受けていたようだ。

「こらトト! お前いい歳をしてなんてことを!」

トトはエサを食べつつ、
「いい歳ってなに? まだ6歳だから、なんのことかわかんないなぁ」
と言った。
猫の6歳は人間で言えば、もう中年だろ!と言いたかったが、やめておいた。
そんなことを言えば、今度はうんこで攻撃されそうだ。
しかし、今回は確かに私が悪い。
私はおとなしく枕を洗濯した。
そして明日こそは朝寝坊しないように、かなり早い時間だが寝ることにした。

ああ、枕が無くて落ち着かない。
トトはまだ怒っているのか、
「今日も部屋に出入りする人が多いねえ…」
などと呟いて、私の落ち着きをますます無くすのだった。

<つづく>


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