8畳の部屋に男女が入ってきた。
女は入るなり化粧を始めた。
男の方は携帯電話を取り出し、留守電チェックをしている。
それぞれの作業を続けつつ、
「部屋、せまいね」
「そうだね」
と、どうでもいい会話を交わしていると、男の携帯電話が鳴った。
ダイアルはしてはいない。
恐ろしく良いタイミングで電話がかかってきたのだ。
「今ついてんけどー!」
電話の向こうの声が不安を隠すかのような大声で言った。
「今電話しようと思ってたとこ。今どこ?」
男はあくまでも穏やかに答えた。
落ち着いている、というよりは単にのんびりしている感じだ。
「なんかなー! どこやここ? 近くに喫茶xxと、xxホテルが見える」
「ちょっとまて、今地図見るから」
男は部屋にあった「宿のしおり」の「この周辺の地図」のページを開いた。
コピーにコピーを重ねたのか、非常に汚い。
「まだかー! 寒いー!」
「まあ、ちょっと待ちぃな」
「お前がここまで迎えに来い!」
「はっはっは。寒いから嫌。」
男はあくまでものんびりと、しかしきっぱり断った。
ふと、地図をなぞっていた男の手が止まる。
「お、わかったぞ。そこからだとxxを右手に見ながらひたすらまっすぐ
歩いてこい。そうすれば着くぞ。」
「えー!? 迎えに来てくれへんのかいな!」
「まあ、5分くらいだから。がんばって来い」
「うー、わかった。」
電話を切ったころ、丁度女の化粧も終わったようだ。
男は言った。
「Kしださん、あいつらもうすぐ着くって」
「あっそー。kabuki、迎えに行かなくていいの?」
「ああ、自力で来るって」
本当は自力で来い、と言ったようなものだ。
その後、特に何をするでもなく、二人はぼーっとして時を過ごしていた。
がちゃ。
部屋のドアが開いて、Nしむらとその後輩、Fくはら君が入ってきた。
「よっ。」
「めっちゃ不安やったぞお!変なところでバスから降ろされて!宿の名前も電話番号もわからへんし!」
「そうかそうか。まあ、着いてんからええやん。」
「でもなー!」
kabukiは少々面倒くさくなってきて、少しだけ反論した。
「でも、宿の名前も電話番号もメールしたはずやけどな。」
「そっ、そうやったかな。はっはっは。」
とりあえず、ちょっとだけ休憩し、Kしださんが女性であるということを失念していたかのように
パンツ一丁になってスキーウェア、スノボウェアに着替え始める。
このとき、kabukiは後で気づいたのだが、パンツのおしり部分が派手に破れていた。
トトに引っかかれて破れたがケチくさく取っておいたパンツを、間違えてはいてきてしまったのだ。
少しだけ気を使って、Kしださんの方にしりを向けて着替えていたのが裏目に出たのか、
Kしださんはそそくさと部屋を去って行った。
その後、Kしださんが着替えるというのでkabukiたちは追い出された。
そして、全員戦闘準備完了!
ウェアの色は、それぞれ見事に違っている。
レッドKしだ! ブルーNしむら! イエローFくはら!
そして、ブラックkabuki!
戦隊もののようだ。
滑走戦隊は、スペシャルマッハ号(シャトルバス)に乗りこみ、ゲレンデへ向かう。
スペシャルマッハ号は満員で、のんびり乗りこんだイエローとブラックは席に座れず、
イエロー「ちょ、ちょっとつらいっすね」
ブラック「そうだね、失敗したね…」
という会話を交わしていた。
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