スノボエピソード7

<スノーボード with パラグライダー (パラグライダー編)>

1999年2月ごろのことである。
会社で知り合った人で、ちょくちょく一緒に飲んだりしている人がスノーボードをやるということを
聞き出し、じゃあ一緒に滑りましょうよ、ということになった。
この人を以下、カッパ先生とする。
なお、この名称は普段私が心の中だけで使っているもので、口に出すと
何かと人間関係がぎくしゃくするという結果を招きそうなので、注意が必要だ。

金曜の夜に家でうだうだしていると、カッパ先生から唐突に電話がかかってきた。
スノーボードにしにいきましょうという話だった。しかもカッパ先生は1BOXのでかい車を
持っていて、ゲレンデまで連れていってくれるという。ありがたや。
当然「いくいく!」と返事をしたが、まだ話は終わっていなかった。
行き先は富士山のふもとなのだが、そこでパラグライダーもやりたいので、
ついでにやらないかい?とのことだった。
パラグライダー。当時、どういうものかよくわからなかったが、パラシュートをつけて
空をただようスポーツで、大層気持ちがいいらしい。
高いところからのながめが良くて気持ちいい、というのはもちろんのこと、
高いところは空気が薄いので、脳への空気供給量が減り、ラリったような感じになって
2倍気持ちいいという。
人が多いときは、空高くでラリった人たちがヘラヘラ笑いながら飛んでいるのだろうか。
ちょっと怖い。
落ちたりしたら痛いから、パラグライダーは見ておくだけ、という約束をして土曜の朝早くに
迎えに来てもらった。

富士山のふもとに向かう車中で話をしていると、どうもパラグライダーのついでに
スノボをやるということになっているようだ。先日の話では逆だった気がするが、まあいいか。
その後、目的地に近づいた頃、話の雲行きがあやしくなってきた。カッパ先生がやけに
熱のこもった口調で、やっぱり一緒にパラグライダーやろうというのである。
やろう、やだ、やろう、やだやだ、と、会話のその部分だけ聞くとなんだか怪しいが、
結局インストラクターつきのタンデムフライト(二人羽織のように、背後に密着してインストラクターがつくやつ)ならやろうかな、
ということになった。が、現地に到着してみると、今日はパラグライダーの大会のため、インストラクターが
全員出払っているため出来ないという。私はほっとしたが、カッパ先生は不服そうで、
じゃあ、僕がインストラクターの代わりをしてタンデムフライトをするから、やろうやろう、と言っている。
カッパ先生は38歳のおっさんだ。そんなおっさんに背後に貼りつかれるのは嫌だし(若くても男に貼りつかれるのはご免である)、
何より以下のような会話がかわされたので、絶対いやだ、ということになった。

私「二人で飛ぶのって難しくないんですか」
カッパ先生(以下、”カ”)「だいじょうぶだよ」
私「今まで何回くらい二人で飛びました?」
カ「いやあ。ははは。」
私「今まで何回くらい二人で飛びました?」
カ「飛んだことないけど、だいじょぶだいじょぶ」
私「・・お断りです。」

その後も、根拠の全くない「だいじょぶ」が連発されたが、絶対やだ、さっさと飛んでこい、と
ちょっと怒ったような態度を示したところ、しぶしぶ用意をして飛びに行ったようだ。
考えすぎから知れないが、そんな無謀なことをしてオッサンと心中したくない。

とりあえず命の危険が去った。空を見ているとパラグライダーが飛び始めた。
人がたくさんいたので、どれがカッパ先生かさっぱりわからなかったが、
トンビが舞っているようで、確かに気持ちよさそうである。

そうやって見ているのも飽きて、車の中で寝ているとカッパ先生が戻ってきた。
しきりに右側頭部をさすっている。
私「どうしたんですか」
カ「飛び立つときに風が強くて木に叩きつけられて。いてて」
私「だいじょうぶですか」
カ「大丈夫だけど、二人で飛んでたらえらいことになってたかもねぇ。よかったねぇ。ははは。」

二人で飛んでたら、体重も二倍になるため、ダメージも二倍以上だろう。
頭が割れて、中身が出ていたかも知れない。

カッパ先生のお気楽かつ無責任な態度に、やや口数を少なくしながらも、
次のスノーボードのため、元気にゲレンデに向かったのであった。
 


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