大阪の知り合いたちとゲレンデへ向かう場合、目的地までは私一人でバスに乗って行くことが良くある。
パックのツアーであるため、全員がゲレンデへ向かう訳なのだが、
まわりは、ほとんどがグループのようだ。
たまに、ゲレンデでバイトをするのが目的なのか、一人の人もいる。
あるとき、一人でゲレンデへ向かう女の子と隣り合わせになった。
小柄なダルマのような・・いや、ちょっとふっくらした感じの子だった。
バスは大体、夜の9時ごろ出発するので、ちょうどその時間に眠くなるように、
私は、前日までの睡眠時間を調整している。
つまり、すぐに寝るので隣に知らない人が居ても、特に気まずいということもない。
バスに荷物をつみ、自分の席につくと、私はさっそく眠りについた。
私は窓側だったため、自分のコートを丸めて窓におしつけ、それをクッション代わりにしていた。
ぐっすり眠れた。が、こういうバスは1時間だか2時間ごとくらいにインターチェンジで休憩を取る。
さらに余計なことに、わざわざ車内の照明をつけるのだ。
目ェさめてまうやんけ!
目がさめた私は、とりあえずトイレに行った。外の寒さで、さらに目がさめた。
ついでに煙草を一服して、完全覚醒してしまったのだった。
車内に戻ったが、やることもないため、また寝る体制に入った。
となりのふっくらした女の子・・面倒なので、以下「ダルマさん」と呼ぶ・・も、やはりトイレ休憩中に
一度外に出たみたいだが、すぐに寝てしまったようだ。
くそう、私も寝るぞ。
コートに頭を押し付けると、なんだか冷たい。濡れている。
窓ガラスの水滴で濡れたのかと思ったら、実は私のよだれだった。
とりあえず、よだれに汚染されていない部分を表面に持ってきた。頭を押し付ける。
やはり、なかなか眠れない。
しかたない、外の景色でも見るか。今どこなのか、さっぱりわからない。つまらない。
そうこうしているうちに、うとうとしてきた。
む、なんだか重いな、と思っていたら、ダルマさんがのしかかって・・いや、寄りかかってきていた。
しばらくしてから気づいたようで、ハッとしたように身を離す。
私はとりあえず気づかないフリをしておくことにした。
窓側と違って、寄りかかるところもないんだから、仕方ない。
が、そんな私の配慮も知らず、ダルマさんは
汚らわしい、といった目つきでひと睨みすると、また寝てしまった。
きっと潔癖症なのであろう。もしくはコートに垂らしたよだれを目撃されたか?
まあいい。無視無視。
この出来事で、また目が覚めてしまった私は、とりあえず外の流れる景色を見ていた。
うとうとしかけたとき、また重みが。見ると、またのしかかっ・・寄りかかっている。
しかも、今度はなかなか気がつかない。
ダルマさんは体温が高かったのか、接触部分がやけに熱かった。
車内は暖房がガンガンに効いていてそれでなくても暑い。
引き剥がそうと思ったが、そのときに悲鳴でも上げられたらえらいことだ。
我慢しようと思った。
なるべく窓側に寄ったが、引き続きのしかかっ・・寄りかかっている。
しばらくして、ダルマさん側のわき腹に拳が押し付けられるような感覚があり、
ダルマさんは離れていった。
ダルマさんは、私のわき腹をグーで押すことで、態勢を立て直したのだ。
少々頭にきた私は、ある作戦を思いついた。
クッションにしていたコートを広げ、わざわざよだれで汚染された部分を
ダルマさん側に向けてかぶった。窓側のクッションには、とりあえず帽子を使うことにした。
その後、1,2回重みを感じたが、それ以来、私の作戦を察知したのかどうか、
のしかか・・寄りかかられることはなかった。
ゆっくり眠れた。
現地に到着し、降りようとしたとき、ダルマさんから刺すような視線を感じたようだが、気のせいであろう。
本当に刺されないうちに、私はバスを降り、荷物を持って宿泊予定の宿に向かったのだった。
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